「十八史略(上下)」

曽先之編/森下修一訳

(上)ドットブック 620KB/テキストファイル 217KB

(下)ドットブック 805KB/テキストファイル 235KB

各巻 1200円

臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、鼓腹撃壌(こふくげきじょう)、酒池肉林、管鮑(かんぽう)の交わり、太公望、虎穴に入らずんば虎子を得ず、水清ければ大魚棲まず、多々ますます弁ず……これらはすべて「十八史略」からでた言葉です。この書物はこうした成語、ことわざの宝庫でもあり、古くから親しまれてきた中国古典のひとつです。「十八史略」は元の学者曽先之(そうせんし)が、「史記」「前漢書」「三国志」などの十八の史書を初学者むけに要約したもので、中国の太古から宋末に至るまでの治乱興亡を平易に叙述するとともに、聖賢・偉人・烈女等の人間像をいきいきと描いた、魅力ある読み物です。この電子ブック版は古代から唐の滅亡までを扱っています。

曽先之(そうせんし)――吉水(湖西省)の出身であるが、生没年は不明。南宋時代から元朝初期にわたって生きた学者。仕官の登竜門である進士となって、湖南省の提挙茶塩司幹弁公事などを歴任、南宋が滅亡したあとは、元朝に仕えることはなかった。

立ち読みフロア

鼓腹撃壌(こふくげきじょう)――帝尭(ていぎょう)の事績

 帝尭陶唐(ていぎょうとうとう)氏は姓は伊祁(いき)で、一説には名を放(ほうくん)といった。帝※(ていこく)(「學」の「子」に代えて「告」)の子である。その仁は天のごとく、その知は神のごとくで、近くによると太陽のように温く、遠くから望むと雲のように盛んであった。平陽に都した。宮殿は茅ぶきで先を切りそろえず、土の階(きざはし)は僅か三段であった。(天子の階(きざはし)は木または石でつくり九段あるのが普通であった。質素倹約ぶりを示したもの)。ある時不思議な草が庭にはえた。毎月十五日以前には一日一葉ずつ増えていき、以後には日に一葉ずつ落ちていった。小の月(二十九日)には残った一枚の葉が干からびたまま落ちずにいた。そこでこの草を※莢(めいきょう)(※は「くさかんむり」に「冥」)と名づけ、これを見て十日と一日(つまり今日は何日か)を知った。
 尭(ぎょう)は天下を治めること五十年に及んだが、天下が治まっているのか、治まっていないのか万民が自分を天子に戴くことを望んでいるのかいないのか、わからなかった。そこで側近のものに聞いたが誰もわからないという。朝廷の役人に聞いたが、これもまた誰も知らないという。民間のものに聞いてみたがやはり知らない。そこでしのびの服装で繁華な大通りに出かけ、童謡を聞いた。子供たちは次のように歌った。
「わが丞民(じょうみん)を立つるは、なんじの極(みち)にあらざるなし、識らず知らず帝の則(のり)に従う」(私たち民衆が安楽に生活を立てていけるのは帝尭(ていぎょう)のこの上ない徳によらないものはない。そう思うと知らず知らずのうちに帝の立てられたお手本に従っている)。また老人があってなにか食べながら腹鼓(はらづつみ)をうち、地面をたたいて(調子をとりつつ)歌っていた。
「日が出ると働き、日が暮れると家に帰って休む。井戸を掘って飲み、田畑を耕して食っている。帝のおかげなどわしらには何の関係もないのだ」(これは逆の意味で、民衆が帝の力を意識しないほどの善政がしかれていたことを意味する)
 尭(ぎょう)があるとき華山(かざん)に遊んだ。華(か)の国境の番人が言った。「ああ、聖人を祝福することを許していただきたい。わが聖人には命永く富み栄え、男のお子さまがたくさんおできになるように」尭(ぎょう)はこれに答えて言った。「それは辞退したい。男の子が多いと心配が多く、富貴になれば面倒が多い。長生きすると恥が多い」番人が言った。「天が万民をおつくりになると、きっとこれに職をお授けになります。男の子が多くてもこれに職をお授けになったら、何の心配がありましょう。また金持になっても人々に分けておやりになれば、何の面倒なことが起こりましょうか。天下に道が行われておれば、万物ともに栄え、道が行われなかったら、徳を修めて静かな境遇に身をおかれ、千年も長生きされて、この世がおいやになられたら、この世を去って仙人となって天に上り、あの白い雲に乗って天帝のおわしますところに行かれたならば、何の恥をかくことがありましょうか」
 尭は天子たること七十年、その間に九年にわたって大洪水があった。そこで鯀(こん)に命じて水を治めさせたが、九年かかっても成績があがらなかった。尭は年をとって政治に厭(あ)いてきた。ときに四嶽(四方の諸侯に長たる官)が舜(しゅん)を推挙した。(そこで尭は舜に)自分に代わって天下の政治を行わせた、尭の子丹朱(たんしゅ)は不肖であった。そこで舜を天子に推薦した。尭が崩ずると、舜が天子の位についた。

……第一巻「太古の伝説時代」より

購入手続きへ  (上) (下)


*** 作品一覧へ *** ホームページへ ***