「動物農場」

オーウェル作/佐山栄太郎訳

エキスパンドブック 485KB/ドットブック版 126KB/テキストファイル 71KB/原書テキスト版 69KB(300円)

400円

英国の農場で虐げられた動物たちが革命を起こして人間たちを追い払う。その首謀者となったのは豚たちだ。希望に満ちた新しい社会の建設が始まる……そして。奇才オーウェルの未来ファンタジーの代表作。

ジョージ・オーウェル(1903〜50)英国の作家。税関吏の息子としてインドに生まれる。イートン校卒業後、警察官としてビルマに赴任、自国の植民地政策に疑問をおぼえ、退職して作家を志した。「パリ・ロンドンどん底生活」「ビルマの日々」で認められ、以後エッセイの書き手としても知られた。のちには社会主義に共感して、スペイン義勇軍に参加(「カタロニア讃歌」)、だが全体主義的傾向に対しては終始反対して「動物農場」「1984年」の諷刺・未来小説を著した。

立ち読みフロア
 メージャー君は皆が体を楽にして、気をつけて待っているのを見届けると、咳ばらいをして喋り始めた。
 「同志諸君よ、諸君は昨晩わたしが不思議な夢を見たということはすでに聞いているだろう。その夢の話は後で話すことにする。まず第一に他に話すことがある。わたしはもはや諸君と一緒にいることも長くあるまいと思う、それでわたしが死ぬ前に、わたしの得た知恵を諸君に譲り渡すことがわたしの義務だと考える。わたしは長い生涯を送って来た。畜舎にひとりねている時、冥想に耽(ふけ)る時間も沢山あった。そして、わたしは、現在生きているどんな動物にもおとらず、この地上の生き物の本性というものも理解していると言ってもよかろうと思う。わたしが話したいと思うのはこの事についてである。
 さて、同志よ、われわれのこの世の生活とはどんなものであるか。これをまともに考えて見よう。われわれの生活はみじめで、骨が折れて、短い。われわれは生まれて、かろうじて息をついているに足るだけの食物を与えられ、能力のあるものは力のある限り最後の最後まで働かされる。そしていよいよ役に立たなくなるとその瞬間に、恐ろしい残酷さをもって屠殺(とさつ)される。イギリスにおいてはいかなる動物も、生れて一年も経てば、幸福とか暇(ひま)とかいうものは何であるかわからなくなる。イギリスの動物はだれひとり自由なものはない。動物の生涯は不幸と奴隷状態である。これはまぎれもない真相だ。
 しかし、これはただ自然の理法であるのか。われわれの国は貧しくして、そこに棲むものにはちゃんとした生活をする余裕がないからなのか。いや、断然そんなことはない。イギリスの土地は肥沃(ひよく)で、気候は温和で、現在棲息している動物よりはるかに多くの動物に、豊富に食物を与えることもできるのだ。われわれのこの農場一つでも、十二頭の馬、二十頭の牛、数百頭の羊を養うことができ、われわれの想像できないほどの安楽と品位のある生活ができるはずなのだ。それならば何故われわれはこんなみじめな状態を続けるのか、われわれの労力の生み出すものが、ほとんど全部人間によって盗まれてしまうからなのだ。同志よ、そこにわれわれの問題の解答がある。それは一言にしてつきる……人間だ。人間がわれわれの唯一の敵だ。人間をここから放逐(ほうちく)せよ、しからば飢餓と過労の根源は永久に絶たれるのだ。
 人間は生産せずして消費する唯一の動物だ。乳も出さない、卵も生まない、力が弱くて鋤(すき)もひけない、野兎をつかまえるほど速くも走れない。しかも人間は動物の王だ。動物を働かせ、動物には餓死を免かれる最小限度の食物を返し、残余は自分のものにする。われわれの労力が土地を耕し、われわれの糞(ふん)が土地を肥やす。しかもわれわれにはこの裸の皮膚以上の何の所有物もない。わたしの目の前にいる雌牛の皆さん、あなた方はこの一年間に何千ガロンの牛乳を出したか。そして、頑丈な子牛を育てるべきはずのその牛乳はどうなったのか。一滴残らずわれわれの敵の喉を通ってしまったのだ。それから、雌鶏(めんどり)の皆さん、この一年間に何個の卵を生んだか、そのうち幾つが雛(ひな)に孵(かえ)ったか。残りは全部ジョーンズとその一味のものの懐にお金となってはいるために市場へ行ったのだ。それから、クローヴァーさん、お前さんが生んだ四匹の仔馬はどこにいるか。それらは老後の支えともなり、楽しみともなるべきものであるのに、一歳になるとみんな売られた。二度と再びどの子にも会うことはあるまい。四回も産褥(さんじょく)に臥(ふ)し、畑で働いた酬いに、何を一体もらったか、ただ割当ての食物と厩(うまや)だけではないか。……

……第一章より


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