「あしながおじさん」

J・ウェブスター作/北川悌二訳

エキスパンドブック 180KB/ドットブック版 128KB/テキストファイル 108KB

400円

孤児院に育った少女ジューディに幸運が訪れる。月に一度手紙を書くという約束で大学に入れてくれるという紳士があらわれたのである。「あしながおじさん」は、快活で機知にとむジューディがこの約束にそって書いた手紙形式の物語。90年も前の作品にもかかわらず今なお世界中の人たちに愛され親しまれている。作者のジーン・ウェブスターはジューディの手紙に添える楽しい絵を、みずからペンで描いた。絵を添えたエキスパンドブック版をぜひお薦めしたい。
立ち読みフロア
孤児を大学に入れてくださったやさしい評議員さん

 とうとう着きました! きのうは汽車旅行を四時間しました。胸がワクワクするような感じですわね。汽車に乗ったことは、一度もなかったからです。
 大学はとっても大きく、びっくりするようなところです――自分のお部屋を出ると、いつも迷子(まいご)になってしまいます。もう少し落ちついたら、そのようすをお伝えしましょう。授業のこともそのときお知らせするわ。学校は月曜日の朝からはじまります。いまは土曜日の夜です。でも、おじさまとお友だちになりたいので、なにより先に手紙を書きたかったのです。
 知らない人に手紙を書くなんて、へんな気がするわ。わたしがいったい手紙を書くなんて、へんな気がするわ――だって、生まれてから手紙を書いたことは、三度か四度しかないんですもの。だから、型破りの手紙を書いても、どうか許してくださいね。
 きのうの朝出発する前に、リペット院長さんとわたしは、とてもだいじなお話をしました。これからわたしがどんなふうにふるまわなければいけないか、ことに、わたしのためにつくしてくださるしんせつなかたにたいしてどうしなければならないかを、院長さんはわたしに教えてくださいました。わたしは気をつけて、とても、うやうやしい態度をとることを、忘れないようにしなければなりません。
 でも、ジョン・スミスと呼んでもらいたがっておいでのかたに、どうしたらとてもうやうやしい態度ができるのでしょう? ちょっとでもつかみどころのある名前を、どうして選んでくださらなかったのです? これでは、馬つなぎの柱さんや、ものほしざおさんあてに、手紙を書いているようなものです。
 この夏、おじさんのことをいろいろと考えてみました。生まれてはじめて、自分のことを考えてくださるかたにであって、家族の者にであったような感じがします。これで身よりの者ができた気分がわいてきて、とてもうれしいのです。でも、たしかに、おじさんのことを考えるとき、わたしの空想の土台になるものは、ほとんどないのです。わたしの知っていることといえば、三つしかありません。
 一、せいの高いかただということ。
 二、お金持ちだということ。
 三、女の子をきらいだということ。
 わたしはあなたを、女の子ぎらいさんと呼んでもいいかしら、と思っています。でも、その名は、なんだかわたしをばかにしたような名だわ。さもなけりゃ、お金持ちさん。こんどはおじさんをばかにしたような名になるわ、おじさんで大切なものはお金だけのようになってしまいますものね。そのうえお金持ちなことは、心とはぜんぜん関係のないことですわ。あなたは、もしかすると、一生涯(しょうがい)はお金持ちでいられないかもしれません。ウォール街(アメリカ、ニューヨークの株式取引所のある通りの名)の頭のいい人たちでも、破産してしまう人はずいぶんいますもの。でも、どんなことがあっても、あなたは一生せいの高いかたでしょう! だから、わたしはあしながおじさんと呼ぶことにきめました。どうかおこらないでちょうだいね。それはないしょの親しいよび名なの――リペット院長さんにはだまっていましょうね。
 もう二分すると、十時の鐘が鳴るわ。ここの一日は、鐘の音で区分けされています。食べるのも、眠るのも、勉強も、みんな鐘でそれをするのです。それで気分も、とてもひきしまります。一日じゅう消防(しょうぼう)の馬のようですわ。ほら、鳴りだしました! 消燈(しょうとう)です。おやすみなさい。
 どんなにきちんと規則をまもっているか、これでおわかりでしょう――ジョン・グリア孤児院できたえられたおかげです。
 かしこ
 ジールシャ・アボットより
 あしながおじさんのスミスさまへ

……最初の手紙

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