「続あしながおじさん」

ジーン・ウェブスター作/北川悌二訳

エキスパンドブック 538KB/ドットブック版 207KB/テキストファイル 181KB

400円

 『続あしながおじさん』は原題を『なつかしい敵さん』といい、『あしながおじさん』の立役者だったジールシャ・アボットは結婚して、孤児院の有力な後援者になっている。それにかわって大学時代の親友、赤毛のサリー・マクブライドは孤児院の院長さんになって大活躍、「敵」と呼んでいるがんこ者のお医者さんと力をあわせて、孤児院を改革し、それをどんどん明かるいものにしていく。前作とおなじ手紙の形で話が進められ、前作とおなじように、ユーモアにあふれ、強い正義感をうたった傑作。前作同様、ウェブスター自身のイラストの入ったエキスパンドブックがおすすめです。
立ち読みフロア
ジューディ

 お便りいただきました。あまりの意外さに、二度読みかえしてみました。ジャーヴィスがクリスマスの贈物として、ジョン・グリア孤児院をお手本になるような孤児院につくりなおすお金をだしてくださり、あなたがそのお金をおつかいなさいとわたしにいってくださった、というわけなの? わたし――このサリー・マクブライドが孤児院の院長さんになるんですって! かわいそうに、あんたたちふたりとも、頭がおかしくなったのかしら? それとも、阿片(あへん)を飲みすぎ、熱にうなされてこんなうわごとをいっているのかしら? わたし、動物園につとめることもだめだけど、百人の子供のお世話もそれとおなじで、だめだことよ。
 おもしろいスコットランド人のお医者さまのことが書いてあるけど、それをえさ(・・)にしてわたしをよびよせようというたくらみ? ジューディ――それにジャーヴィス――おふたりのおなかは、こちらにはすけ見えよ! ペンドルトンのおうちの暖炉(だんろ)のまわりで、どんな家族会議がおこなわれたか、こちらには、ちゃーんとわかっているわ。
「大学をでてからあんなぐあいで、サリーもかわいそうだわ。ウスターでつまらないおつきあいに時間なんかつぶさずに、なんかためになることをしたほうがいいのにね……。そのうえ(これはジャーヴィスのことば)女たらしのハロックという若い男に心をよせているらしいぞ。ぼくは政治家なんて、だいきらいさ。なにかむちゅうになれるようなりっぱな仕事をあてがって、心をそっちにそらせ、この危険から救ってやらなければならないな。うん、いいことがある! ジョン・グリア孤児院の世話をあの人にたのむとしよう」
 まるでそこにいるように、わたしの耳にはジャーヴィスの声がきこえてくるわ。あなたの楽しい家庭をこの前におたずねしたとき、ジャーヴィスとわたしが真剣(しんけん)に話しあったことは、(一)結婚、(二)政治家の理想の低さ、(三)社交婦人がおくっているくだらなくつまらない日々のくらしのことだったの。わたしがそのとき聞かせていただいたおことばを心にきざみつけ、その後ウスターに帰ってからは、週に一回午後をつぶして、アルコール中毒患者婦人収容所の人たちといっしょに詩を読んでいることを、あなたのりっぱなご主人さまにおつたえくださいませ。わたしの生活は、はたで見るほど、いいかげんなものではありませんことよ。それから、例の政治家のことも、そうご心配いただくほどさしせまったことではございませんから、どうぞご安心ください。このかたはりっぱな政治家です。なるほど、関税(かんぜい)や物件税(ぶっけんぜい)や労働組合についての考え方は、ジャーヴィスの考えとぴったりというわけではありませんけど……。わたしの一生を社会奉仕にささげさせようとするあなたのお気持は、とてもうれしいことなんですけど、孤児院の立場からこのことを考えてみることも必要だと思います。放りだされた気のどくな孤児たちのこと、かわいそうとは思いません?
 あなたはそうじゃなくともわたしはかわいそうと思うわ。そして、つつしんで、こんどのお話はご辞退(じたい)します。
 でも、ニューヨークにこないかとよんでくださるのだったら、おおよろこびで承知(しょうち)よ。あれこれとそちらで計画してくださる遊びには、あまり気がすすみませんけど……。ニューヨーク孤児院や、すてごの病室を見せてくださる計画はどうかやめにして、そのかわりに、それを劇場やオペラや晩餐会(ばんさんかい)などにきりかえてくださらない? 夜会服をふたつ新調(しんちょう)し、白い毛皮のえりのついた青と金色の上衣を持っていますから。
 わたし、おおいそぎで荷づくりをはじめます。ただのわたしじゃなくて、リペット院長さんの後任としてだけでわたしをよびたいのだったら、どうか電報をちょうだい。
 軽はずみでそれを改めようとしない
 サリー・マクブライドより

……冒頭部分より


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