「古典落語・上方艶ばなし」

藤本義一編

ドットブック版 139KB/テキストファイル 62KB

500円

収録作品一覧

女護(にょうご)が島
しつけぼぼ
おさがり
赤貝猫
金箔屋
建礼門院(けんれいもんいん)
茶漬け間男
風呂敷間男
左甚五郎
からくり医者
お好み吸物
揚子江



松茸(まつたけ)
故郷へ錦
紀州飛脚
張形(はりがた)
羽根つき丁稚(でっち)
忠臣蔵
鞍馬の天狗
逢いびき
反故(ほご)染め
猪飼野(いかいの)
金玉茶屋
下口
上方艶笑私感――藤本義一
藤本義一(1933〜)大阪府堺市出身の小説家、放送作家。1974年に上方落語家の半生を描いた『鬼の詩』で直木賞受賞。以後文芸作品からエッセイ、社会評論などの著作を発表。井原西鶴の研究家でもある。大阪出身の織田作之助をテーマにした長編四部作が代表作。日本放送作家協会関西支部長であり、プロ作家を育成する心斎橋大学総長も務める。
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しつけぼぼ

 ただいまでは、生娘というもんは、稀少価値があるなどと申しますが、これは、昔かて変りおまへん。息子はんに、すっかり身代を譲りはった旦那はんなんかは、なんとかして、もういっぺん一生の思い出に生娘をなんて、さがしてはる方があるそうですな。お茶屋さんなどへまいりまして、
「おかみ、わし、この年齢(とし)ンなってしもうたが、もういっぺんだけ、サラのンをあたってみたいんやが、どうやろなア」
「そら旦はん、むずかしい注文でっせ」
「そやさかい、ゼニ金糸目つけんいうてんのや、なんとかしてえな」
「そうでっか、ほなら、うちのお父ちゃんに相談しますワ」
 いうて、相談したんですが、
「なんや、しょうがないな、そら探すの大変やで。まあええ、ほな、あの四国から来た、お花いうのおるやろ。あれがいい」
「そんな阿呆な。あれはあんた、九州、四国まわってきた、すれっからしやおまへんか。あんなん、サラで通りまっかいな、ガタガタでっせえ」
「だから、わしが細工するいうてんのや。おまえ、はよ呼んで来い。それから、糸と針、持ってきてな。上と下とを縫うといたら、わからへんのやから、相手は目がうといのやさかい」
「そんな無茶なこと……」
「大丈夫だから連れてこいッ」
 無茶なやつがおったもんで、連れてまいりますと、糸と針でもって、ちょいと結んで、ほうりあげたんですが、ややしばらくあって、旦那はんが下りてまいりまして、
「やあ、やあ、結構やった。久し振りにわては結構な思いさせてもらいましたわイ」
「旦はん、あんた結構なって、生娘やいうことわかりましたか」
「そらわかるがな。誰も手ェ通しとらんからして、しつけ糸がそのままやった」

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