「日本の民話(東北・北海道編)」
 

藤澤衞彦著

ドットブック版 262KB/テキストファイル 122KB

600円

東北・北海道地方に伝わる代表的な昔ばなし47編を集めています。新潟14編・福島13編・宮城5編・山形2編・秋田3編・岩手6編・青森1編・北海道3編からなります。

藤澤衞彦(ふじさわもりひこ)(1885〜1967)東京生まれ。明治大学教授。風俗史・民俗学・伝説学・児童文学など、幅広い分野で研究に従事した。日本風俗史学会、日本アンデルセン協会、日本児童文学者協会など多くの学会・協会の設立、育成を手がけ、児童文化図書館長、日本伝説学会会長などを歴任した。主な著書に『日本伝説研究』『日本民謡・童謡研究』などがある。

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糠福・米福(ぬかふく・こめふく)

「おまえ福で、おんも福、ただ、《福(ふく)う》と呼ばれたら、だれが返事して、だれがゆく?」
「そしたら、二人して、《はい》《はい》いうて、二人して行ったらよい」
 母(かか)さんに死なれた福が、後母(あとかか)さんの連れてきた福に聞かれて、答えおわると、二人は《ふふふふ》《ふふふふ》と、声をたてて笑いました。
「おまえ、さきにいた福だに、前福(さきふく)といったらいい、おんは、あとからきた福だに、後福(あとふく)と呼ばれよう」
「ふふ、そんなら姉福(あねふく)、妹福(いもふく)でもいいやろ」
「だれか、いい名をつけてくれんかなァ」
 妹福が、まだ、もの足りなそうにいうたとき、
「福う」
 と、呼ぶお母(かあ)の声。
「どっちの福だァ」
 と、妹福が声をかけますと、
「おんの福よう」
「なら、二人とも、その福よう」
 と、妹福が姉福の手をとって、お母のところへゆきますと、お母は、米の団子と、糠(ぬか)の団子とを、お椀の水に浮かせていました。
「お母(かか)、なにしてんや」
 と妹福が、聞きますと、
「団子もろたに、二人にやろうとおもて、呼んだのじゃ」
 と、いいながら、お椀の水に浮きあがった糠の団子を、まず妹福にくれました。お母は、浮くほうが、よい団子だと思って、それで、姉福には米の団子をくれました。
 二人は、いつものように、糠の団子も、米の団子も分けあって食べるほど仲がよく、なんでも話しあえたので、
「ねえさんの、米の団子のほう、うまいね、それで、姉さんはこれから、米福(こめふく)と呼ばれなさい。おん、まずいほうの糠の団子もろたに、糠福(ぬかふく)と呼ばれましょう」
「だめ、だめ。だいいち、お母が承知しません」
「いんや、お母はいま、米の団子より、糠の団子のほうが、いいと思うてなさる、すぐに、きめてくるわ」
 こういって妹福は、お母のところへいって、
「お母よ、おんの福の名、これから糠福と呼んでくだされ、そして、姉さんの福、米福と呼んでくだされ」
「あいよ」
 と、お母は、すぐ承知してしまったので、それで、これから姉福の名は米福、妹福の名は糠福と呼ばれるようになりました。
 それから、ある日のこと、
「糠福う、米福う」
 二人は、お母に呼ばれて、《はい》《はい》と返事して、ゆくと、
「今日は、二人して、栗ひろいにいってこいや。これ栗ひろいの糠袋、米袋や、いっぽう、ひろうてこいや」
 といって、糠福には糠袋を、米福には米袋をくれましたが、外見(そとみ)のよろしい米袋には、底がありませんでした。
「栗山へゆきついたら、米福は、先あゆめ、糠福は、後からあゆめ、この言いつけ、まもらんならんぞ」
 それで二人は、栗山に着くと、米福が前にゆき、糠福は後からついてゆき、むちゅうになって、栗をひろいはじめました。前に立った米福は、いくら栗をひろっても、栗はみんな、底からぬけ落ちてしまいますので、ちっとも袋にたまりません。はんたいに糠福は、姉さんの後からゆくと、きっと、うまく栗が落ちているので、おもしろがって、ひろいためました。(つづく)

……新潟の民話より


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