「ルバイヤート」

オマル・ハイヤーム/黒川恒男訳

ドットブック版 117KB/テキストファイル 26KB

300円

12世紀のペルシアの詩人オマル・ハイヤームの、とくに「酒呑みをたたえた」作品として有名な詩集。1859年に英国の詩人フィッツジェラルドによって英訳が紹介されて非常に有名になったが、今日では、それらがすべてオマル・ハイヤームの詩であったかどうかは疑問視されている。この翻訳は、その後のとくに第二次大戦以後の研究の進展にともなってまとめられた、より信頼のおける詩集にもとづくものである。

オマル・ハイヤーム(1040頃〜1123)ペルシアの数学者・天文学者・詩人。ニーシャプール生まれ。セルジューク朝のシャーに仕え、天文学者として暦の制定に従事したり、3次方程式の解法などで数学者としても著名であった。だが今日では酒をたたえ、現世の快楽を詠んだ無神論的な詩集「ルバイヤート」によってよく知られている。

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哲理に意味の宝石をちりばめたる人たち、神についてもろもろ語ったが、神秘の糸口だれにもつかめず、無駄口たたいて眠り込んだ。


世の精鋭といわれる人たち、天高く思索の天馬《ブラーク》〔預言者マホメットが天国へ夜旅するのに乗ったといわれる天馬〕にうちまたがり、神を識ろうと努めてみても空のように、心揺《ゆ》らいで首を振るだけ。


昔いた人も、今いる人もみな次々に跡を追って行く。この世の天国に永久《とわ》に留まる人なく、来ては去り、また来ては去る。


ばらが得られぬなら、茨《いばら》でたくさん、天国の光がささぬなら、地獄の火でたくさん、外皮、庵《いおり》、教長がないのなら、鐘、協会、異教徒帯《ズンナール》〔中世に回教徒以外の異教徒がしめていた帯〕でたくさん。


おお、神よ、わが土を創ったのはそなた、わが衣服を紡いだのもまたそなた。わしが行なうすべての善悪は、そなたがわしに書いたもの。〔回教徒の信仰によると、人間は土で創られ、そのいっさいの行為、世のあらゆる現象は天命(カダル)の支配をうけ、神の書に書き記されているという〕


うるわしい人に微笑《えみ》の唇を授ける運命《さだめ》は、悩む人には苦痛を与える。歓びを授からなくても哀しむまい、千倍の悲しみをうけても楽しもう。


ああ、むなしく過ごしてきたものだ、逆《さかさ》にした大空の碗の中で挽《ひ》かれてきた。ああ、ああ、まばたきするうちに、思いかなわず、消え去ってゆく。


わが面《おも》と髪いかに美しかろうと、チューリップの頬、糸杉の姿のように。永遠の絵師はなぜにこのわたしを、時の花園に飾ったのかわからない。


酌人《サーキー》がわが類《ジンス》とその特異性《ハースセ》を知れば、各種《ノウ》より百の差《フアスル》を列挙できよう。わが亡きあとも慣例《ラスム》で酒を酌《つ》いだら、わが定義《ハッド》を拡大してくれよう。〔論理学の術語を使用した詩〕


日々の糧、神の定めたものだから、減らしも増やしもすることできない。あるもので満足せねばならないし、ないものにも満足せねばならない。

一一
酌人《サーキー》〔宴席で酒を酌む者で、通常美少年がこの役を務めた〕よ、わが心が手から離れたら、大海原のように拡がろう。愚かさに満ちた狭い器《うつわ》の神秘主義者《スーフイー》は一杯の酒を飲んでも溺れよう。

一二
ああ、青春の書《ふみ》は閉じた、人生の愉しい春も過ぎてしまった。青春という歓びの鳥よ、ああ、いつ来て、いつ飛び去ったのか。

一三
運命《さだめ》の書《ふみ》が手に入るなら、思いのままに記してやろう。この世から一挙に悲しみ消してやり、大空に歓喜の頭をもたげよう。

一四
運《めぐ》る天輪の悪業を視よ、世の友もすべていまはいない。できるだけひとりでいるがよい、あすを求めず、きのうを視ずに今を見よ。

一五
春が来て、冬が去り、人生の頁《ページ》は繰られゆく。酒を飲め、悲しむな、賢者は言った、世を悲しむは毒、酒こそそれを解く薬。

……冒頭より


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