「RUR」
…ロッサム万能ロボット会社

カレル・チャペック作/深町眞理子訳

ドットブック版 80KB/テキストファイル 53KB

400円

 ある学者が、人工的な方法で原形質を得ることに成功し、これによって、外見は人間と少しも変わらないが、肉体的苦痛を感じず、喜怒哀楽や死に対する恐怖を欠いた人造人間をつくりだす。この点に目をつけた企業家が、ロボットの大量生産に着手し、やがて彼らに人間の仕事のすべてを肩がわりさせる。労働はロボットによって行なわれるので、人間はいつか生活を楽しむだけの存在と化する。チェコの国民作家カレル・チャペックの若き日の代表作。「ロボット」という言葉が初めて考案され、使われたSF古典としても有名。

カレル・チャペック(1890〜1938)チェコスロバキア北部の炭鉱町に、医師の息子として生まれる。プラハ大学で哲学を学び、ベルリン、パリに留学。その後、作家生活にはいり、1921年に戯曲「RUR(ロボット)」「虫の生活」を発表、とくに前者は諸外国で舞台にかけられて大反響を引き起こした。「ロボット」という言葉は、彼の造語である。以後「マクロプロスの処方」「クラチカト」「山椒魚戦争」など、SF的手法の長編未来小説を次々に完成するとともに、「園芸家の一年」や、多くの自筆挿絵入りの旅行記など、親しみのわく読み物にも健筆をふるった。

立ち読みフロア
【ヘレナ】 わたしの国で、最初のロボットというのを見たことがありますわ。町議会が買った――いえ、雇ったのです。
【ドーミン】 買った、でいいのですよ、グローリーさん。ロボットは売買されるものなんです。
【ヘレナ】 そのロボットたちは、道路清掃作業員として雇われました。彼らがお掃除をしてるところを見たことがありますけど、とても奇妙で、とてもおとなしいんですのね。
【ドーミン】 ロッサム万能ロボット工場では、一つの銘柄ばかりは造りません。ですから、非常に精巧なものから中程度のものにいたるまで、各種そろっています。最上のやつは、ほぼ二十年は生きます。(呼び鈴を鳴らしてマリウスを呼ぶ)
【ヘレナ】 で、やはり死にますの?
【ドーミン】 ええ、磨耗(まもう)してしまうのですよ。
 マリウス登場。
【ドーミン】 マリウス、〈手工業労働者〉の見本を連れてきてくれ。(マリウス退場)
【ドーミン】 その両極端の見本をお目にかけますよ。この第一等級のやつは、比較的安価で、大量に生産されています。
 マリウス、二名の〈手工業労働者〉をともなって、ふたたび登場。
【ドーミン】 ごらんなさい。まるで小型トラクターのように頑丈です。並みの知能をそなえた、保証つきの品ですがね。もういい、マリウス。
 マリウス、ロボットをともなって退場。
【ヘレナ】 見ていると、なんだかとても不思議な気持ちがしてきますわ。
【ドーミン】 (呼び鈴を鳴らし)わたしの新しいタイピストをごらんになりましたか?(スーラを呼ぶ)
【ヘレナ】 いえ、気がつきませんでした。
 スーラ登場。
【ドーミン】 スーラ、こちらはミス・グローリーだ。
【ヘレナ】 お会いできてうれしいですわ。こんなへんぴな土地でのお勤め、ずいぶんお退屈でしょうね?
【スーラ】 わかりません、グローリーさん。
【ヘレナ】 ご出身はどちら?
【スーラ】 工場です。
【ヘレナ】 まあ、あそこでお生まれ?
【スーラ】 そこで造られました。
【ヘレナ】 なんですって?
【ドーミン】 (笑いながら)スーラはロボットなんですよ、最高級のね。
【ヘレナ】 まあ、そうでしたの、ごめんなさい。
【ドーミン】 スーラは怒りゃしませんよ。この皮膚をごらんなさい、グローリーさん、こういうのを造ってるんですよ。(スーラの顔面にさわる)さわってごらんなさい、この顔に。
【ヘレナ】 いいえ、結構です、結構ですわ。
【ドーミン】 この娘がわれわれとは異なる材料でできているとは、とうてい信じられますまい? ちょっとあっちを向いてごらん、スーラ。
【ヘレナ】 もうよして、よしてください。
【ドーミン】 じゃあグローリーさんとお話ししてみなさい、スーラ。
【スーラ】 どうぞおかけください。(ヘレナ座る)航海は快適でしたか? (第一幕より)

購入手続きへ


*** 作品一覧へ *** ホームページへ ***