スカイラーク・シリーズ 2

「スカイラーク3」

E・E・スミス/川口正吉訳

ドットブック版 1125KB/テキストファイル 258KB

700円

デュケーンは執拗に未知の金属Xを奪おうとするが、その企みはすべて失敗、恐るべき目的を胸に秘めて宇宙に飛び出していった。その頃、オスノーム惑星の皇太子夫妻が地球を訪れる。オスノームは第14太陽の第3惑星の侵攻をうけて、破滅寸前にあるという。シートンは最新の《スカイラーク2》を駆って、救援に向かう。だがそこには全銀河系文明の壊滅をはかる、凶悪な宇宙の敵が待ち受けていた! スペースオペラの巨匠「ドック」スミスが残した名作《スカイラーク》シリーズ第2弾!

E・E・スミス(1890〜1965)アメリカ・ウィスコンシン州生まれ。博士号を得ているため、E・E・《ドック》スミスと呼ばれるSF界の巨匠。「スカイラーク・シリーズ」で名を馳せ、金字塔「レンズマン・シリーズ」(全6巻)を雄大な構想のもとに完成させ、シリアスなハードSFの先駆者となった。

立ち読みフロア

一 デュケーンふたたび宇宙へ

 ワールド・スチール社のいちばん奥の個室でいま、がっしりしたデスクを挟(はさ)んで、ブルッキングズとデュケーンが睨(にら)みあっていた。デュケーンの声は氷のように冷たい。その浅黒い皮膚の額に険(けわ)しい条(すじ)がよせられている。
「呑むんだ、ブルッキングズ、まっすぐに呑むんだ。ぼくは今晩十二時半に宇宙へ出発する。あんたに言っておくことは、絶対にリチャード・シートンに手を出すなということだ。何もしてはいけない。何もだぞ! あんたの頭脳に二つの単語をはっきりと刻みつけておくんだ。《あらゆることを差し控える》、とな。ぼくが戻ってくるまで――どんなに長くかかろうと、だ――絶対に何もしてはいけない」
「あんたの気持が変ったとは驚いたね、博士。たった一度の血戦でそんなに怖気(おじけ)づくようなあんただとは思わなかった」
「それ以上の阿呆(あほう)になるのはよせ、ブルッキングズ。怖気づくということと、無駄な努力に気づくことは、月とスッポンほども違うのだ。あんたも憶えているだろうが、ぼくは宇宙船から牽引(けんいん)ビームを使って、シートン夫人を吊りだし、誘拐しようとした。ぼくを止めるものは何もなかったはずなのだ。ところが、やつらがぼくを探知した。おそらく、自動式のオスノームの電子放射探知機を使ったのだろうが……。そしてぼくがまだ、やつより二百マイル以上も上にいる間に、ぼくの宇宙船を真っ赤に焼いた。あのときぼくははっきりと、奴らがこのぼくを制止(ストップ)したと悟ったのだ。ぼくとしては、もう元の計画に戻り、誘拐はよして、《奴ら全部を殺す》――これ以外に道はないと悟ったのだ。ぼくの計画は時間がかかるというので、あんたは反対した。そして飛行機をやって、やつらに五百ポンドの爆弾を一発落とした。ところが、飛行機も爆弾も、その他一切が、瞬時に消滅してしまったじゃないか。爆発せず、ただ閃光(せんこう)を発して消えただけだった。憶えているか? するとあんたは、凝(こ)り性もなく愚劣なアイデアをいくつか持ち出してきた。長距離爆撃その他――愚劣な攻撃計画をだ。どれひとつとして有効だったものがあるか? それなのにまだあんたは、ふつうのガンマンを使って奴らを討(う)ち取れるなどと、呆れた神経で主張している!
 ぼくはあんたに、図面を描き、数字を書いて教えてやった――ぼくはいやになるほど詳しくあんたに説明した、やさしい一音節の用語だけで、噛(か)んでふくめるように、われわれの立ち向かう敵がどんな奴かということを、教えてやった。いまもう一度、ぼくはあんたの頭脳へ叩きこんでやる――奴らは《何ものか》を手に入れているんだ。あんたにシラミの脳ほどの頭脳(あたま)があれば、ぼくが宇宙船を使ってもできない仕事は、ケチなギャングなどを何百人使ってもできっこないということがわかるはずだ。いいかねブルッキングズ、何度でも繰り返すが、ギャングなどの手には負えんのだ! 有効なのは、ぼくの方法だけだ、それ以外には絶対にないのだ」
「しかし、五年というのは、どうも!」
「ぼくは六ヵ月で帰ってくるかもしれない。しかしこうした宇宙旅行では、どんな突発事故が降って湧(わ)くかもわからんのだ。だからゆとりをみて五年という計画で出発するのだ。五年でも充分じゃないかもしれん――だから、十年分の補給物資を携行する。地下室にあるぼくのあの箱、いまから十年経(た)たないうちは、絶対に開けてはいかん」
「しかし博士。あれくらいの邪魔ものは二、三週間もあれば大丈夫片づけられるよ。いつもそれで行っていけたんだ」
「おお、冗談も休み休み言ってくれんか、ブルッキングズ! 寝言を言っている時機(とき)じゃないんだ。あんたがシートンを殺せるチャンスなんてものは、まるで……」
「博士、博士、たのむからそんな乱暴な言葉は使わんでくれよ!」
「まだビクついているのか? あんたの弱腰には、ぼくはいつも腹が立ってくる。ぼくは直接的な行動を主張する。言葉と同時に実行――一回こっきりの勝負、いつもそうだ。繰り返すが、あんたにシートンを殺せる確率なんてものは盲(めくら)の仔猫(こねこ)がシートンを殺せるよりも少ないんだ」

……巻頭より

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