星間パトロール

「太陽強奪」

エドモンド・ハミルトン/深町眞理子訳

ドットブック版 387KB/テキストファイル 171KB

500円

巨匠ハミルトンのスペース・オペラ、星間パトロール・シリーズの続編。太陽とすれ違うはずだった銀河系内の赤色巨星アルトが、奇怪にも突如針路を変え、太陽系めざし接近をはじめた。このまま進めば、衝突は一年以内だ! 「八星連合」最高評議会から派遣されたジャン・トール配下の遠征隊は、やがてアルトの周囲に1個の惑星を発見。だが、偵察中に、謎の光線に宇宙船を吸い寄せられ、無気味な都市の真只中に墜落した!……この「激突する太陽」ほか、星間パトロールの勇者たちが縦横に活躍する「太陽強奪」「星雲のなかで」「彗星を駆るもの」「宇宙の暗雲」のあわせて5編を収録。

エドモンド・ハミルトン(1904〜77)アメリカ・オハイオ州生まれのSF作家。スペース・オペラ(宇宙活劇)の先駆的・代表的な作家として有名で、「星間パトロール」シリーズの雄大な構想は多くの読者の心を捉えて大評判となり、のちのE・E・スミスの「レンズマン」シリーズに引き継がれた。SFの多くのアイデアを創案したことも特筆される。他の代表作に「キャプテン・フューチャー」「スター・ウルフ」などがある。

立ち読みフロア
 一

 わたしが狭い司令室にはいってゆくと、操縦装置の前にいたパイロットが、ふりかえって敬礼した。
「まっすぐ前方にアルファ・ケンタウリ」かれは報告した。
「よし、右に三十度方向転換。そしてアルファ・ケンタウリを過ぎるまで、速度を八十光速に落とせ」
 即座に光る操縦桿がかれの手で引かれ、そばに歩みよったわたしは、速度計の針がじりじりと逆戻りするのを見た。それから、司令室の前面を構成している広い展望窓を通して、恒星間宇宙の壮大なパノラマが、艦の針路の転換とともに横へずれてゆくのが見えた。
 狭い司令室は、艦の長い、葉巻状の船体の最上部に位置しており、窓を通して見ると、全天の輝かしい光景が一目で見渡せた。前方には、アルファ・ケンタウリの巨大な二重星が光っている。周囲の星々をことごとく圧倒して、ひときわ明かるく輝くその二個の太陽は、いま、われわれの針路がそれるにしたがい、ゆっくりと横へ移動してゆく。右手には、漆黒の空を横切って、遠く火の粉を散らしたような銀河の流れ。なかに、色とりどりの宝石のように燦然たる光彩を放つのは、真紅に燃えるベテルギウス、澄明なカノープス、白熱のリゲル。そしていま、まっすぐ前方、アルファ・ケンタウリの二重星のかなたから、徐々に姿をあらわしてきたのは、わが太陽系の主たる明かるい黄色の星だ。
 光速の八十倍もの速さで航行する艦のなかで、いまわたしがまばたきもせずながめているのは、その黄色い星であった。思えばあれからはや二年以上になる。われわれの艦が、銀河系宇宙全域の平和を維持している強大な銀河連邦艦隊の一員となるべく、太陽系を飛びたってきたあの日から。この二年間に、われわれは艦隊に伍して宇宙を縦横にかけめぐってきた。天の河を端から端まで巡航し、全宇宙にまたがる宇宙航路をパトロールして、ときおり商船隊から通行税を取りたてるために出没する海賊船を撲滅する。だがいま、太陽系の政府当局からの指令で、われわれは故郷に呼び戻されることになり、こうして帰還の瞬間を、それこそ固唾を呑む思いで待ち受けているのだった。これまで接触してきた数多くの星、そこに住む人びと、みな強大な連邦に属する友邦として、暖かくわれわれを迎えてくれた。だが、こうしたすべての善意にもかかわらず、われわれは故郷へ帰れるのが嬉しかった。すでにずっと以前から、われわれは異星人にはなれっこになっている。アルゴルの奇怪な脳髄人間から、シリウスの鳥に似た種族にいたるまで、さまざまな異星人と接触し、その奇妙な、知的生物とは思えぬ形態をも、違和感なく受け入れられるようになっている。にもかかわらず、かれらの住む世界は、所詮人間世界ではない、わが太陽の周囲をめぐる、八つの住みなれた惑星ではない。そしていま、われわれが一路そこをめざして突進してゆくのは、その、なつかしい太陽系なのだった。
 わたしが窓の外を見つめて瞑想にふけっているあいだに、アルファ・ケンタウリの二重星はいつしか背後に消え、かたわらのパイロットは手早くスイッチを操作して、艦のスピードを全速力に戻そうとしていた。数分のうちに、艦は最近開発された反転換式発動機の力で、ほとんど一千光速もの速力で航行していた。この新式の発動機は、光の振動数のおよそ一千倍もの振動をつくりだすことができ、この振動の持つ推進力を利用して、艦は毎秒一億マイルもの空間を飛んでいるのだった。しかし、銀河系内にはくらべるもののないこの高速にもかかわらず、前方の明かるい黄色の星は、すこしも大きくなってゆくようには見えなかった。
 ふいに、背後のドアがひらいて、二等航宙士のダル・ナーラがはいってきた。代々有名な宇宙飛行士を輩出した名家の出身で、わたしに敬礼しながらあけっぴろげな笑顔を見せた。
「あと十二時間です、艦長。そしたらいよいよ到着ですよ」
 彼女の熱心さに、わたしは思わず微笑を誘われた。「きみは、われわれのちっぽけな太陽系へ帰るのが、残念ではないようだね?」
 彼女はいきおいよく首を振った。「ええ、ちっとも! そりゃあそこは、カノープスやなにかにくらべたら、ほんの針の先でつついたぐらいのものかも知れません。ですがこの宇宙に、あそこにくらべられる場所はまたとありませんよ。それにしても、こう急に呼び戻されることになったのは、いったいなぜでしょうね?」
 この質問に、わたしも顔を曇らせた。「さあ、わたしにもわからん」わたしはのろのろといった。「いったん連邦艦隊に参加させた船を呼び返すなんて、およそ前代未聞のことだからね。だが、それをやるからには、なにかのっぴきならない事情があるにちがいない――」
「そうですね」彼女はドアのほうにむかいながら快活にいった。「いずれにせよ、理由なんて問題じゃありません、そのおかげで故郷に帰れるのであればね。乗組員なんか、わたしよりもっと大騒ぎしています――あと一光速でもよけいに速力を出そうと、懸命に発動機と取っ組んでいますよ」
 彼女の背後でドアがかちりと閉まるのを見ながら、わたしは声をたてて笑った。が、ふたたび窓のほうにむきなおったとき、彼女が口にした疑問がまたしても心に浮かんできて、前方の黄色い星を見つめるわたしは、知らず知らず考えこむような目つきになっていた。というのも、ダル・ナーラにもいったとおり、どこかの星がその所属船を連邦艦隊から呼び戻すというのは、およそ異例のことだったからだ。現在、銀河系内のすべての有人惑星をその傘下におさめる連邦は、恒星間宇宙の治安の維持を全面的に艦隊に依存している。そしてこの艦隊に、連邦を構成するすべての星が、各自割り当てられた艦艇を提供しているのだ。したがってわたしの知るかぎりにおいて、どこかの星が艦隊に提供した船を呼び戻すということは、それが最後の手段でもないかぎり、まずないはずなのである。にもかかわらず、われわれのもとに指令が来、即刻全速力で太陽系に帰還し、海王星にある〈天文情報調査局〉へ出頭せよ、と伝えてきたのだった。しかし、この指令の背後にあるものがなんにせよ、それはまもなく判明するだろう。なぜならわれわれはすでに旅の最終段階に突入し、まっしぐらに太陽系へむかっていたからで、そう考えたわたしは、さしあたりその問題は心から押しのけておくことにした。
 しかしながら、ある奇妙な執拗さをもって、その疑問はその後もわたしを悩ましつづけた。そして、それから十二時間後、ようやく艦が太陽系内にすべりこんでいったとき、徐々に拡大してゆく前方の黄色い星をながめるわたしの心には、一種の放心があった。近づくにしたがい、艦の速力は着実に減じ、われわれがついに、そのもっとも外側の惑星であり、あらゆる星間交通の発着点である海王星へむけて下降してゆくころには、かろうじて一光速かそこらで動いているにすぎなかった。この速度から、われわれはさらに船脚を落として、海王星のただ一個の衛星を通過し、混雑する航路をぬって、惑星の表面さして降りていった。
 表面から五十マイルのところで、海王星のあらゆる光景は、幾重にも重なった巨船の群によってさえぎられてしまった。この、星間交通のものすごい混雑こそ、この惑星を新米パイロットの恐怖のまとにしているものである。見渡すかぎり、はるかな地平線の端から端にいたるまで、銀河系の各地区から集まった多数の船舶がひしめきあっている。ベテルギウスからきた巨大な穀物船がいるかと思えば、アルクトゥルスやヴェガからの壮麗な定期貨客船もいる。アンタレスをめぐる惑星からきた船いっぱいのラジウム原石もあれば、遠くデネブからきた身軽な郵便船もある――それらすべて、そしてさらに幾万の船が、たがいにひしめきあいながら惑星の上空を旋回し、航宙管制船からの着陸の指令を待っている。そしてやっと許可を得た幸運なものから順ぐりに、一隻また一隻と着陸してゆくのだ。ときおりこの大集団のあいだに、なにかのはずみで隙間ができると、そこから、さらにその下に密集した惑星船の群がちらりと目にはいる。これらのすばしこい小型船は、休みなくその比較的短距離の旅をくりかえしては、多くの乗客を木星や金星や地球に送りとどけているのだが、上を飛ぶ恒星船の力強い巨体にくらべると、ほんのちっぽけな玩具の船のようにしか見えない。
 しかしながら、われわれがこの混雑のただなかを指して下降してゆくと、それらの船はただちに道をあけた。というのも、艦首についた連邦のマークは、カノープスからフォーマルハウトにかけてあまねく知れ渡っていて、このマークをつけた艦隊の所属船は、どこでも非常な尊敬を受けているのである。この突如としてひらけた通路を抜けて、われわれは真一文字に惑星の表面さして下降し、ちょっとのあいだ、迷彩のような白い建物と緑の草原の上空で方向を見定めてから、〈天文情報調査局〉のある大きな平屋根の建物へ降りていった。みるみるうちに近づいてくる地上の景観を見ながら、わたしはその暖かい、日に照らされた緑のパノラマを、二十万年前までの氷に閉ざされた荒野と比較せずにはいられなかった。二十万年前、太陽系の科学者たちは、協力して巨大な熱伝送装置をつくりあげた。これは、太陽面に近いところからその高熱をキャッチし、それを高周波の振動に変えて海王星上の受振装置に送り、ここでこれを熱に還元して、惑星を暖めるという仕掛けである。けれども、このような感慨にふけっているひまもなく、艦ははや音もなく広い屋上の上に到着し、そこに集まった多数の銀白の船と、船から出てじっとこちらを見守るその乗組員たちの出迎えを受けて、静かにそこに降りたった。
 五分後、わたしは小さな自動式円錐エレベーターのひとつで、螺旋状に建物の内部へ降りてゆくところだった。やがてエレベーターから出たところは、長い真っ白な廊下である。そこに、ひとりの案内係が待っていて、わたしはかれに先導されて廊下を進み、その突端の、大きな黒いドアの前に立った。係がさっとそれを押しひらき、わたしはなかにはいった。

 そこは天井の高い、象牙色の壁をした部屋で、つきあたりの窓は、全面そのむこうのさわやかな庭園へむかってひらかれていた。奥のデスクに、ひとりのずんぐりした、白髪まじりの、機敏そうな目をした男が坐っていて、わたしがはいってゆくと、いきおいよく立ち上がって近づいてきた。
「ラン・ララク!」かれは叫んだ。「やっと来てくれたね! これでもう二日間も、われわれはきみの到着を待っていたのだ」
「アルデバランの近くで発動機が故障しましてね、それで遅くなりました」わたしはかるく会釈しながら答えた。というのも、相手は〈天文情報調査局〉の局長、フルス・ホルだったからである。かれがデスクのそばの椅子を指したので、わたしはそこに坐り、かれも自席に戻った。
 ちょっとのあいだ、かれは無言でわたしを見つめていたが、ややあって重々しく口をひらいた。
「ラン・ララク、きみは当然、きみの艦がとつぜん太陽系に呼び戻されたのはなぜなのか、不思議に思っているだろうな? じつは、あのような指令を出したのには、公然と伝えるわけにはいかないある理由があったのだ。いったん公に広まれば、全太陽系が即座に収拾のつかない混乱におちいるような理由がだ!」
 かれは一呼吸して、探るようにわたしの目を見つめ、それから言葉をつづけた。
「きみも知ってのとおり、宇宙は空間という無限の深淵から成り、この空間のなかにそれぞれ数十億光年もの距離をおいて、いくつかの巨大な太陽の集団、恒星の塊りが浮かんでいる。このうち銀河系と呼ばれるわれわれの所属する恒星の集団が、ざっとした円盤の形をしていて、わが太陽系は、この円盤のいちばん端に位置していることも、きみは知っているだろう。そのむこうには、われわれと隣りの恒星の集団、つまり島宇宙とをへだてる、あのはかり知れぬ宇宙の深淵があるのみで、これまで、われわれの宇宙船はもとより、他のいかなるものもその深淵を横断した記録はない。
 ところがいま、ついに、あるものがこの深淵を横切った、いや横切りつつある。というのは、三週間ほど前から、われわれの天文学者によって、一個の巨大な暗黒星がこの無限の空間を横断し、わが銀河系に近づきつつあることが観測されているのだ。計器の示すところによれば、この星の大きさは想像を絶しているという。とうに死んだ暗黒星であるのに、わが銀河系内の最大の星、カノープスやアンタレスやベテルギウスなどとくらべても、まだ大きいのだ。わが太陽の数百、数千万倍も大きい、暗い死んだ星、どこか遠い無窮のかなたからさまよい出てきた巨大な放浪星、それが、わが銀河系宇宙を指して、想像もつかぬはやい速度でまっしぐらに進んでくるのだ!
 科学者の計算によると、この暗黒星は銀河系のなかにとびこんでくることはなく、ただそのふちをかすめて、ふたたび果てしない深淵のかなたに去ってゆくだけで、銀河系のふちにあるわが太陽へも、百五十億マイル以内に近づくことはないといわれていた。したがって、衝突その他の危険はいっさい考えられず、いまでは太陽系のだれもがこの暗黒星の接近を知っているが、それに関連してなんらかの危険を予測するものはひとりもいない。ところがここに、太陽系の住民にはまったく秘密にされていること、ごく少数の天文学者と当局者が知っているだけのある秘密があるのだ。それというのは、ここ二、三週間のあいだに、この暗黒星の針路がいままでの直線から曲線に変わり、わが銀河系のふちへむけて内側にカーブして、いまや、十二週間以内に、これまで考えられていた百五十億マイルではなく、三十億マイル以内という近距離で、太陽系のそばを通過することが明らかになったのだ! そして、このような巨大な暗黒星が、これほどの近距離をかすめてゆくことになれば、結果はただひとつしかない。わが太陽は必然的にこの星の強大な重力場にとらえられ、惑星をぜんぶ引き連れたまま、二度と帰れぬ暗黒の深淵へ引きずりだされてしまうのだ!」
 フルス・ホルは言葉を切り、蒼白な顔を引きしめてわたしを見つめた。だがその目は、わたしを見ているのではなく、わたしを通してどこか遠くを見ているのだった。わたしは、ことの重大さにしばし言葉も出ず、がんがん鳴る頭をかかえて呆然としていた。ややあってかれは言葉をつづけた。
「もしこれが一般に知れ渡ったら、たちまち太陽系全体に恐るべき混乱が引き起こされるだろう。それを考慮して、このことはほんの一握りの人物にしか知らされていない。どこかに逃げだすことは、このさい問題外だ。なぜなら銀河系には、わが太陽系の一兆をこす住民を、残された数週間のうちにぜんぶ移住させられるほどの船はないからだ。となれば、残された手段はただひとつしかない――きわめて頼りない、ほとんど無鉄砲といっていい方法だが、それは、この刻々と近づいてくる暗黒星を現在の内曲がりの針路からそらして、わが太陽のはるか遠くを、無害に通過させようというものだ。そしてこの目的のために、われわれはきみの艦に帰還を命じたのだ。
 わたしは概略つぎのような計画を持っている。つまり、この暗黒星を現在の針路からそらすのに使えそうな機械、装置のたぐいを、あらいざらい携行して、銀河系外宇宙へ進出し、そこでこの暗黒星と遭遇しようというのだ。過去一週間に、わたしはこの遠征に必要な装備をできるかぎりかき集め、五十隻の恒星船団を組織した。それはいま、この建物の屋上で、旅の準備をととのえて待機している。これらはいずれも、たんに船脚の速い郵便船にすぎないが、この遠征のために特別な装備をほどこしてあり、これに、旗艦として、最低一隻の戦艦が同行すれば、まさに願ったりかなったりというわけだ。という次第で、きみの艦に白羽の矢が立った。そして、もちろんわたしもこの遠征に参加はするが、きみに隊長として全体の指揮をとってもらおうというのが、わたしの計画なのだ。
 とはいえ、きみが過去二年間、連邦艦隊の一員として多忙な日を過ごしてきたことは、わたしもよく知っている。したがって、もしきみが希望すれば、だれか他の人物がその地位に任命されることになるだろう。この仕事には危険がともなう。想像もつかない危険がわれわれを待っている。だがもしそれでもきみがそれを受けたいと思うなら、その地位はきみのものだ」
 フルス・ホルは口をつぐみ、探るようにわたしの顔を見つめた。一瞬わたしは無言で坐っていた。それからつと立ち上がると、部屋のつきあたりの大きな窓に歩みよった。その外には、緑の庭園が広がり、そのむこうに、家々の白い屋根が薄い日射しにきらめいていた。無意識にわたしの目は、その光の源を見上げていた。ちっぽけな太陽――小さく、かすかで、遠い。だがそれでも――やはり太陽だ。長いあいだわたしはそれを見上げていたが、やがてのろのろとフルス・ホルにむきなおった。
「お受けします」わたしはいった。
 かれは目を輝かせて立ち上がった。「承知してくれると思っていたよ」かれは簡潔にいい、そしてつけくわえた。「もう何日も前から準備は完了している。ラン・ララク、即刻出発しよう」
 十分後、わたしたちは広い屋上発着場にいた。五十隻の遠征船団の乗組員たちが、けたたましい合図のベルに応じて各自の持ち場に散ってゆく。さらに五分後には、フルス・ホル、ダル・ナーラ、そしてわたしの三人は、艦の司令室に立って、足もとの白い屋根が艦の上昇とともに背後に沈んでゆくのを見守っていた。と、すぐに、屋上の五十隻の船団がわれわれを追って飛びたち、われわれは密集した楔形の隊形を組んで、天頂さして翔(か)けのぼっていった。
 頭上では、航宙管制船からの信号がわれわれのために広い道をあけ、まもなくわれわれはこみあう船の群を横目に見て、なおも列をなして飛来する船とすれちがいながら、そのままの隊形でしだいに速力をあげていった。
 いまやわれわれの背後および周囲には、銀河系宇宙の壮大な星のパノラマが広がっていた。だが前方には、ただ暗黒が――果てしれぬ暗黒が横たわるのみ、そしてそれをめがけて、わが船団はしだいしだいに速力を増して突進していった。海王星はすでに消え、背後遠くには、わが太陽系のすべてである黄色いきらめきが、かすかに見てとれるだけだった。外へ――外へ――外へ――広大な銀河系の境界をこえ、光のない無のなかへ、果てしない暗黒の深淵のなかへ、脅威にさらされたわが太陽系を救うべく、われわれはまっしぐらに突き進んでゆくのだった。

……「太陽強奪」冒頭より


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