「タゴール詩集」

ラビンドラナート・タゴール/山室静訳

エキスパンドブック 82KB/ドットブック版 69KB/テキストファイル 64KB

400円

タゴールは世界的に最もよく知られているインド近代の代表的な詩人。この詩集はその膨大な作品のなかから山室氏が選び抜いた詩編を集めたもので、初期の詩集「新月」「園丁」から最も有名な「ギタンジャリ」をふくめて、最後期の詩までを網羅した選詩集。ロマン的で神秘的な宇宙感をうかがうことができる。

著者:ラビンドラナート・タゴール(1861-1941)
インド・ベンガル州の名家に生まれ、幼いころから詩の創作にめざめる。サンスクリット文学、ヴィシュヌ文学、キーツ、シェリーらのイギリス・ロマン派の影響のもとにインド世界独自の詩境をつくりあげた。「ギタンジャリ」はみずから英訳を発表、ひろく世界に認められ、ノーベル文学賞の受賞につながった。インド独立運動にもかかわり、インド国歌の作詞者でもある。

立ち読みフロア

◇この偉大な宇宙の中に◇

この偉大な宇宙の中に
巨大な苦痛の車輪が廻っている
星や遊星は砕け去り
白熱した砂塵の火花が遠く投げとばされて
すさまじい速力でとびちる
元初の網の目に
実在の苦悩を包みながら。
苦痛の武器庫の中では
意識の領野(りょうや)の上に広がって、赤熱した
責苦の道具が鳴りどよめき
血を流しつつ傷口が大きく口をあける
人間の身体は小さいが
彼の苦しむ力はいかにはてしないか
創造と混沌の大道において
いかなる目標に向かって、彼はおのれの火の飲物の杯をあげるのか
奇怪な神々の祝宴で
彼らの巨大な力に飲みこまれながら――おお、なぜに
彼の粘土のからだをみたして
狂乱した赤い涙の潮が突進するのか?
それぞれの瞬間に向かって、彼はその不屈の意志から
かぎりない価値を運んでゆく
人間の自己犠牲のささげもの
燃えるような彼の肉体的苦悩――
太陽や星のあらゆる火のようなささげものの中でも
何ものがこれにくらべられようか?
かかる敗北を知らぬ剛勇の富
恐れを知らぬ堅忍
死への無頓着――
何百となく
足の下に燃えさしを踏みつけ
悲しみのはてまで行く、このような勝利の行進――
どこにこのような、名もなき、光り輝く追求
路から路へと辿(たど)る共々の巡礼があろうか?
火成岩をつき破るこのように清らかな奉仕の水
このようにはてしない愛の貯えがあろうか?


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