「宝島」

スティーヴンスン作・田中西二郎訳

エキスパンドブック 746KB
/ドットブック版 280KB/テキストファイル 199KB

600円

最初は雑誌に連載されて好評を博し、本になってからも少年だけでなく大人からも愛読されてきた海洋冒険小説の代表傑作。自然なプロット、登場人物のリアリティ、臨場感あふれる描写の連続、冒険小説の元祖といってよい。エキスパンドブックは、E・A・ウィルソンの魅力的な挿し絵いり。

ロバート・ルイス・スティーヴンスン(1850〜94)スコットランドのエディンバラ生まれ。生涯、病苦との戦いに明け暮れ、転々とボヘミアン的な生活をおくりながら、すぐれた物語を書き続けた。83年に著した「宝島」は「ロビンソン・クルーソー」以来の傑作冒険物語と評判をとり、出世作となった。南太平洋サモア島で療養生活をおくるうち、脳出血で亡くなった。代表作「ジーキル博士とハイド氏」「バラントレー卿」「誘拐されて」「若い人々のために」 など。

立ち読みフロア
  宝島についての詳しいいきさつを書き残しておくようにと、郷士(ごうし)のトリローニさんや医師のリヴジー先生、その他の皆さんがぼくに言われる。島の方位だけは、まだ宝をすっかり掘りだしたわけではないから書かずに、ほかのことは初めから終わりまで、ひとつも隠さず書くがよいとのことなので、いまここにペンをとりあげたのはキリスト暦十七……年であるが、話はもっと古く、ぼくの父が《アドミラル・ベンボウ》という旅篭屋(はたごや)をいとなんでいたころ、頬(ほお)に刀傷のある渋紙色(しぶがみいろ)の老水夫が、はじめてわが家に宿をとった、あの当時にさかのぼって筆をおこそう。
  その老水夫が、手押し車に積んだ船乗り用の荷物箱のさきに立って重い足どりで宿の門口にたどりついたときのことを、ぼくはまだきのうのことのようにおぼえている。背の高い、頑丈(がんじょう)な、どっしりした、こげ茶色の肌の男で、タールまみれの弁髪(べんぱつ)が、泥のついた青い上着の肩にかぶさり、ごつごつした傷あとだらけの両手はつめのさきがまっ黒であちこち欠けており、おまけに片頬にはきたならしい鉛色をした大きな刀傷のあとがあった。
  いまでもおぼえているが、そのとき男は入江を見わたしながら口笛を吹いているなと思っていると、いきなり、あの古い船唄(ふなうた)をうたいだした。それは、その後もこの男が口ぐせのようによくうたった唄である……

 《死人(しびと)の箱》には十五人……
 ヤンレサ、ホイ、それに一本、ラムの壜(びん)!

 そしてそれは、長年、錨巻揚機(いかりまきあげき)にとりついて声をからしたあげくにそんな声になったと思われる、かんだかい、あぶなっかしい、しわがれ声だった。それから、手に持っていた、テコのような棒きれで戸をたたき、ぼくの父が出てくると、ぞんざいな調子でラムを一杯くれと言った。そのコップが来ると、いかにも酒の味のわかる玄人(くろうと)のように舌なめずりしてゆっくりと味わいながら、相変わらず外の崖(がけ)をながめたり、店の看板を見あげたりしていた。

……《第一部 第一章 旅宿『アドミラル・ベンボウ』》より


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