「森の生活(ウォールデン)

ソロー著/神原栄一訳

エキスパンドブック 532KB/ドットブック 345KB/テキストファイル 308KB

700円

アメリカン・ロマンティックスの源流ソローの代表作。ウォールデンの池のほとりでの独居生活の試みをつづった本書は、自然とともに生きることの意味を新たに問いかける。エキスパンドブック版ではロナルド・ケラーの挿し絵が自然のきびしさと静寂を伝える。

ヘンリー・D・ソロー(1817〜62) マサチューセッツ州生まれ。ハーヴァード大学卒業後、小学校の教師。ついでエマソンの書生となる。徹底した個人主義を唱えるエマソンの影響のもと、のちに「森の生活」としてまとめられる独居生活を試みた。文明化・機械化を告発した思想家としても、後代に大きな影響をあたえた。思想をのべた代表作に「市民的抵抗の思想」がある。

立ち読みフロア
 以下のぺージ、と言うよりもその大部分を書いた当時、私はマサチューセッツ州はコンコードの森の中にいて、最も近い隣人から一マイルも離れたウォールデン池(ポンド)のほとりに自分で建てた家に住み、自分の手による労働だけで暮らしを立てていた。私はそこで二年二ヶ月生活した。現在は再び文明生活にもどっている。
  もし町の人たちが私の暮らしぶりについてこと細かな詮索(せんさく)をしなかったら、私も読者のみなさんに自分の個人的な事柄を押しつけるようなことはしないだろう。私の生活ぶりを、ことさらに奇をてらうものと言う人もいるだろう。だが、私にしてみればまったくそんなことではなく、当時の事情を考えればきわめて自然で素直なことであったように思われるのだ。ある人たちは、何を食べていたか、寂しくはなかったか、恐(こわ)くはなかったか、というようなことをたずねた。私が収入の何割を慈善のために捧げたかを知りたがる人もいたし、大家族を抱えている人は、私がかわいそうな子供たちを何人養ったか知りたがった。こういうわけなので、私がこの本の中でこれらの質問のいくつかに答えようとしても、私になんら特別な関心を持っていない読者にはお許しいただきたいと思う。たいていの本では、私、すなわち一人称の言葉は省かれているものだが、この本ではそれが執拗(しつよう)に使われている。その点が本書と他のおおかたの本との、自我に関する主な違いである。
  われわれは、話をするのは結局一人称であることをふつうは忘れているものだ。もし私に、私自身を知っているのと同程度に良く知っている人間が他にいれば、私は自分の事をそれほど多く語りはしないだろう。不幸にも経験が狭いので、私の書く主題はこれだけに限られてしまうのである。
 ……
  ここに書くことは、おそらくとくに貧しい学究向けのことが多くなるだろう。そうでない読者は、自分に当てはまる部分を受け取るようにしてくれるだろう。誰もわが身に合わない上着を着ようとむりやり縫い目を引っ張るようなことはしない、と信じている。その上着でも、それが体に合う人には十分役に立つのだから。

……《経済》より


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